ヨーロッパとはどこか 統合思想から読む2000年の歴史
中嶋洋平著
吉田書店
価格:2400円+税
ISBN978-4-905497-27-1
2000年代後半以降の世界規模での経済危機の中で、ヨーロッパもまた、深刻な経済危機に苦しんでいる。ヨーロッパの経済危機は、特に「単一通貨ユーロ」の危機という形で現われている。
では、そもそもヨーロッパはなぜ「通貨統合」が必要であったのか。その通貨統合の背景にある、「ヨーロッパ統合」の思想とは何か。そして、「ヨーロッパ」とは、どこからどこまでなのか。
本書は、「統合」をキーワードにして古代から現代にいたる二千数百年にわたるヨーロッパ世界の歴史を追いつつ、その過程で主張されたヨーロッパ統合ビジョン、そして、受け継がれていったヨーロッパ統合思想について検討することで、統合されるべきヨーロッパ世界の領域がどのように描き出されてきたかといった問題を探求するものである。
古代から、ヨーロッパ統合の意識が生まれた中世、そして深刻な経済危機にみまわれながら、将来へのビジョンを模索している現代と、ヨーロッパが巡ってきた膨大な歴史が生き生きと、わかりやすくまとめられている。またその内容も、単に歴史の記述にとどまらず、政治・経済的な流れや、哲学・思想的な背景までを扱っており、「ヨーロッパ」というものの全体的な把握でき、読みやすいながらも、大変読み応えのあるものとなっている。
ヨーロッパの歴史、文化を知るうえで、そして世界全体がこれからどのような道を進んでいくべきかという問題を考えるうえで、大きなヒントを与えてくれる作品である。