ベルナール・セラ:南仏の組紐王子ベルナール・セラはパリのモード専門学校スタジオ・ベルソーを卒業した。セラによってパスマントリー(伝統的組紐)の世界に新風が吹き込まれる。その才能と技量はオートクチュールの有名ブランドが一目置いている。「無形文化財企業」に認定されたセラ自身の会社ル プランス デュ シュッドには、そういった有名ブランドから注文依頼が来る。並行して、ベルナール・セラの名を冠したブランドでは、パーティーバッグ、ポシェット、ベルト、アクセサリーといったクリエーションを90色で展開しており、パリ12区のヴィアデュック・デザール(芸術高架橋)にあるセラのショールームで見ることが出来る。フラン・パルレ:ところで、あなたがパスマントリーの仕事を選んだのですか?それとも、パスマントリーの方があなたを選んだのですか?ベルナール・セラ:実は、パスマントリーの方が私を選んだのかもしれません。パリで2005年にこの仕事を専門にしている会社に出逢ったという意味では、そうなります。私はその会社でテキスタイル製のバッグとアクセサリーの小規模なコレクションの制作を始めたのです。そして、そこで仕事を始めて一年後にその会社が財政難に陥ったことが判明して、ある時、私がその会社を買収する可能性が生じたのです。ですから、パスマントリーの方から私に近づいてきたというわけです。どうしてもというわけではなく、逡巡して、自問自答して、決断を下しました。つまり、思い切ってこの会社を買収したわけです。それ以来6年、2012年4月に6年目になります。フラン・パルレ:そうですか。すべての制作はフランス国内で行われていますね。フランス国内を選んだ理由は何ですか?ベルナール・セラ:そうですね、私は、すべてをフランス国内で制作しています。選んだ理由はと言うと、フランスはクリエイティヴなエネルギーに満ちているし、多くの技能もあるからだと思います。近年は、非常に多くのものを失いました。というのは、かなり多くの企業が倒産したり、買収されたり、海外へ拠点を移転したりしていますから。私自身、常にフランスのこの技能や伝統を守るために闘っているのは確かです。フランス中央部の雇用も守りました。というのは、私の会社がリヨンとサンテティエンヌの間、つまりステファノワーズ地方にあるからです。こういうことは非常に強い気持ちがあるからこそ、ですね。フラン・パルレ:パスマントリーはかなり昔からある非常に伝統的なお仕事ですが、あなた御自身はこの分野をどのように変えていくのでしょうか?ベルナール・セラ:パスマントリーは古くからある仕事です。歴史上に起源がないくらいですから。本当に物凄く昔からあるものです。王政時代には室内装飾や御婦人達のドレスの穴を隠すための飾りなどに使われていたり、まあそれはそれとして、ですから、プラスしているのは、私自身の若さとエネルギーと創造性と好奇心です。というのも私は頻繁に旅に出ますし、世界中のいろんなところで着想を得て、それを作品に私流のやり方で再現させているのです。パスマントリーという言葉が埃っぽくてちょっと古臭い感じがするので、それを連想させないような新しい視点や若さをプラスしたいと思っています。フラン・パルレ:あなたにとって、色は非常に大切なものだという印象を受けます。ベルナール・セラ:ええ、色は私にとって非常に大切です、理由は至極単純ですが、私は南仏出身で、元々はカタロニア地方出身です。そこはフランスでも色彩豊かな地方なのです。それで、色を通して、そこに投影するのは私のエネルギーや生きがいでもあるのです。フラン・パルレ:あなたの制作したものを身につける女性像についてお話いただけますか?ベルナール・セラ:私の制作したものを身につける女性のお客様は、私から見ると、当たり前のように旅に出たり、あらゆるものに好奇心が強くて、自発的に行動する女性ですね。自分らしいライフスタイルを持つ女性。自分に自信があり、意志が強く、同時にすごく洗練されていて、とても繊細で、自分の周囲に起きていることに耳を傾けるような女性です。フラン・パルレ:あなたのテクニックはモードのあらゆる分野で使うことが出来ますか?ベルナール・セラ:ええ。実際、私のテクニックはモードの多くの分野で使うことが出来ます。というのも、私は定期的に毎シーズン、オートクチュールの数多くのブランドと仕事をして、コラボレーションをしているわけですから。つまり、パスマントリーのテクニックは洋服に付けるボタンを作るにも、靴や帽子の上にも付けることにも合うのです。それで、パスマントリーのモチーフ、房飾りや飾り紐を制作しています。パスマントリーの仕事を通して、本当に凄く多くの可能性が生まれるのです。フラン・パルレ:近い将来、ブランドとしてのベルナール・セラはどのような方向性をとろうとしているのでしょうか?ベルナール・セラ:まず、フランスの技が進むべき道を保つことです。その卓越した技を守ることは必ずしも生易しくはないのです。というのは、現在、とにかくヨーロッパは経済危機や根本的な見直しを図るといったような、かなり厳しい状況にあるからです。それは世界中どこでも同じだと思います。ですから、自分のパスマントリーとその創作活動や多くの一流ブランドとのコラボレーションを続けて、その上で、室内装飾の分野も開拓しようとしているのです。この分野もまた極めて将来性の高いマーケットだと考えています。というのも、パスマントリーというのは元々、装飾分野にはとにかく非常に適しているからなのです。というわけで、装飾関連のすべての事業展開にもっと自分の時間を割いてみようと考えています。2012年5月インタヴュー:エリック・プリュウ翻訳:大平奈生美指導:粟野みゆき
ベルナール・セラ、パスマントリー(伝統的組紐)デザイナー
投稿日 2012年5月1日
最後に更新されたのは 2023年5月25日