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オリヴィエ・ダルネ、「蜂蜜銀行」造形芸術家
投稿日 2013年1月23日
最後に更新されたのは 2023年5月25日

オリヴィエ・ダルネ - 蜂蜜銀行

「時は金なり、とばかりは言えない、往々にして、時は蜂蜜だ」というスローガンを掲げて、造形芸術家オリヴィエ・ダルネは、パリ郊外のサン・ドニに居を構えて、人の巣(都市)住民に、生活環境との関係に疑問をなげかけるよう呼びかけています。このために、彼は我々に多くのことを教えてくれるミツバチを登場させます。

フラン•パルレ:貴方は養蜂家を兼ねた芸術家ですか?それとも芸術家を兼ねた養蜂家ですか?
オリヴィエ・ダルネ:それは、何で生計を立てているかということになりますね。私は蜂蜜・ミツバチで生計を立てているのか? それとも、芸術で生計を立てているのか?という問題ですね。 私は実際そんなことを自問したことがありません。私は夢をかなえることが出来るようにしているのです。夢が養蜂をすることであれば、それは養蜂です。私の場合は、キャリア、願望、実験の場は、芸術のそれです。私は単に動物と仕事をする造形芸術家です。もし蜂蜜で生計を立てようとしたならば、私は養蜂家ということになるでしょう。でも、私は蜂蜜で生計を立てようとはしていません。私は作品の設営、実験をするためにミツバチと仕事をしているのです。ミツバチはこの先ひょっとしたら私を養ってくれるかも知れませんが、あくまでも媒体であるという私の考えには変わりありません。私は、多くの人間、都市空間、密集化といったものを抱える環境の中で、動物と共に、ある状況下で仕事をしているのです。

フラン•パルレ:このミツバチへの夢はどんなふうにして生じたのですか?
オリヴィエ・ダルネ:ある本から、それも拙劣な養蜂に関する本から生じたのですが、その本が素晴らしい問題をなげかけてくれたのです。要するに、この下手な書き手の養蜂の本が、世の中について、とても面白いけれど気がかりで不安定なミツバチの世界とその社会組織について、私の目を開かせてくれたのです。知らず知らずに、疑問から疑問、好奇心から好奇心が湧いて、私はついにミツバチになったように考えるに至りました。まるで、鱒釣の人が終には魚になり変わったように考える、あれに似ています。

フラン•パルレ:どうやって、都市で蜂蜜の生産が出来るのですか?
オリヴィエ・ダルネ:逆説的ですが、それはとても上手くいくのです。今日、都市での蜂蜜生産の諸条件と田舎でのそれとを比較したら、現状では都市で生産するほうが田舎でよりずっと簡単で安心なのです。結局のところ、田舎では問題が多すぎるからです。同一品種栽培、殺虫剤・除草剤の使用、生物多様性の喪失等、これら全ての問題を累積していくと、実際のところ、養蚕家にとってミツバチで生計を立てるのが極めて困難になります。それと同時に、ミツバチにとっては、彼らは蜂蜜を作る前に死んでしまいますから、生きることそのものが難しくなります。

フラン•パルレ:具体的に、蜂蜜を生産するにはどうするのですか? 蜂の巣箱をどのように設置するのですか?どんな場所に?
オリヴィエ・ダルネ:実は、我々は蜂の巣箱を置くのではなく、幾つかの装置を設置します。ミツバチを収容する作品群を制作し、それらを公共の空間に設置します。これらは、人間と、あえて言うならば、野性的世界との間を連結するオブジェです。ミツバチは常に野性的動物であり続けますからね。これらの作品群は、10万、20万、30万匹ものミツバチを収容し、そこには人間とミツバチとの同棲を可能にする諸条件を配備します。

Sortie du Pollinisateur urbain / Noisy le Sec - La galerie - 2007
©Olivier Darné

フラン•パルレ:“君子、危うきに近寄らず”ではないのですか? ちょっと怖くはないのですか?
オリヴィエ・ダルネ:もちろん怖いですよ。でも恐怖心即ち危険ではありません。一般に恐怖心のほうが危険より強い感情です。子供の時、ひょっとしたら刺されたかもしれないという記憶があるので、我々には生来不安感があります。この記憶がメンタル全域を占めるのです。面白いことに、2006年に行われたポンピドー・センターでの実験のように、受粉化装置である大箱を設置し、その中に、人間とミツバチを閉じ込め同棲させると、人間は恐怖心が理論よりも遥かに強いことに気付きます。その結果、恐怖心が好奇心に変わっていきます。とても面白いことです。

フラン•パルレ:貴方には教育者という重要な役割もありますね?
オリヴィエ・ダルネ:その通りです。偉大な使命を担う芸術は、政治的使命も持つべきです。そして、政治に携わる最良のやり方は、教育に力を注ぐことです。おおよそ、責任感、良心、ヴィジョン、夢、ユートピアといったことは、子供時代に、また教育の中で育まれるものです。こういったことは、必ずしもフランスの学校で学ぶことではありませんが、それを行動へと組み立て、勇気付け、発展させることは、恐らく芸術の数ある力の一つです。夢を現実のものにすることです。

フラン•パルレ:貴方は銀行家としての素質もおありですね・・・
オリヴィエ・ダルネ:素質に留まらず実際に銀行業務を実践しています。私達の投資であると同時に、公有地に投資するやり方を検討しているのです。要するに、投機への願望、人間が天然資源に投機する方法を探っているのです。ところで、人間は、資源が枯渇しかかるまで、絶滅するまで投機するので、ついには、このきわめて短期的なヴィジョンは壁にぶつかってしまいます。この現実の経済社会にあって、蜂蜜銀行と呼ばれる代替銀行、違った類の銀行の諸条件をどうしたら満たすことが出来るかということを考える必要がありました。受粉活動、公共の福祉、生きている物を対象分野として扱う銀行、死んでいるお金から生きているものを作り出す銀行。私達がしているのはそういうことです。

フラン•パルレ:具体的な方針は?
オリヴィエ・ダルネ:具体策は、死んでいる人間のお金、即ち貯蓄、銀行の紙幣等を、本物のミツバチに、ミツバチの群れに変えることです。概要を話せば、私達は養蜂家に仕事を委ねて共に働きます。お金を蜂蜜貯蓄銀行に預けて頂き、これを生きたお金に変えるのです。養蜂家は我々と共に働き、この死んでいるお金を、生きたミツバチに変えることをします。

Miel Béton
© Olivier Darné

フラン•パルレ:最後に一言「コンクリート蜂蜜」について。どうして商売のレベルにこぎつけたのですか?
オリヴィエ・ダルネ:商売とは酷いですね。馬鹿にしてますよ。商売の話などする必要はありませんね。でも、考えてみれば当然ですね。貴方がたは現代社会に生きて、当世風に暮らしているのですから。商売は後退を意味すると私は思います。商売ということではないのですよ。それは限定品で、その地域でのみ名づけられている物の名称なのです。即ち、サン・ドニでの住人達の中での事なのです。ある時、12歳か13歳ぐらいの男の子が蜂蜜を試食に来て、私の目をじっと見てこう云ったのです。「コンクリートだ!」と。 コンクリートに囲まれた環境のサン・ドニに住んでいたり、或いはサン・ドニの如き地区にすんでいると、そこの人が「これはコンクリートのようだ」と言うのは、先ずもって褒め言葉なんですよ。

2013年1月
インタヴュー:エリック・プリュウ
翻訳:井上八汐
http://www.banquedumiel.org

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