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2014年6月フラン・パルレ文庫
投稿日 2014年6月3日
最後に更新されたのは 2023年5月23日

S Kobayashi 著者:

ジョルジュ・ペレック伝 言葉に明け暮れた生涯
デイヴィッド・ベロス著
酒詰治男訳
Georges Perec : A Life in Words de David Bellos
水声社
価格:12000円+税
ISBN978-4-8010-0026-1

ジョルジュ・ペレック(1936〜82)は、20世紀の文学界において特異な位置を占めている作家である。物への欲望に支配される若いカップルを描いた『物の時代』でルノドー賞を受賞して以後、アルファベットのeの文字を一切使わない小説『煙滅』、自伝と架空の物語が交錯する『W』、パリのアパルトマンに住む様々な人物たちを様々な文体を駆使して描いた『人生 使用法』など、言語遊戯を取り入れた実験的な作品を生涯にわたって書き続けた。本書は、イギリス人のペレック研究者であり翻訳家のデイヴィッド・ベロスによる、ペレックの詳細な伝記である。
彼の作品は、まさに実験と呼ぶのにふさわしく、奇想天外なものである。しかし、それだけではなく、彼の作品には、自分がユダヤ人でありながらもその出自を隠し続けなくてはならなかったという事実や、父が第二次世界大戦で戦死し、母は強制収容所死亡したという、人生におけるトラウマなどが色濃く影を落としている。つまり、彼の人生を知ることは、彼の作品の深い理解にとって不可欠なのである。
しかし、ペレックの人生はその作品と同様、多くの謎に包まれている。加えて、ペレックは死後、多くの信者たちによって神格化され、容易に語ることが不可能な空気に包まれていた。そんな状況にあって本書は、ペレックを過剰に神格化することなく、一人の人間として描いているのである。
本書の功績は、ジョルジュ・ペレックがいかなる経緯の果てにいかなる作家となったのかを、二次世界大戦以降の歴史という枠組みの中で、克明に描いている点である。また、ペレックの交友関係や、兵役、ユーゴスラビアやドイツとの関係、神経生理学の研究所勤務の様子など、従来あまり取りあげられていなかった部分を詳細に取りあげ、作家の全体像に迫っているのが本書の特徴である。
ペレックという作家の新しい側面を見せてくれる、ペレック評伝の決定版ともいえる大著である。

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