フラン•パルレ Franc-Parler
La francophonie au Japon

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アラン・パサール、三ツ星レストラン「アルペ−ジュ」(パリ)オーナーシェフ
投稿日 1999年12月1日
最後に更新されたのは 2017年7月19日
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アラン・パサール:味に燃える
 
1996年以来ミシュランの三ツ星に輝くアラン・パサールだが、彼自身はこの栄誉を「天の贈り物」と受け止めている。パリのレストラン、アルページュのオーナーシェフとして職人を自称するパサール。フランス料理に対する責任を全うするために、パリの「アトリエ」で不断の研究に励みながら創作料理を国境を越えて披露しに来てくれる。
 
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© Franc-Parler
フラン・パルレ:外国旅行で得られることは何ですか。
アラン・パサール:私にとって必要な創造性を磨くことです。料理は密度の濃い仕事ですし、パリにいれば何かと用事があって忙殺されてしまいます。日本などにときどき旅行することでインスピレーションが得られるし、アイデアをたっぷり持ち帰ることができるのです。私は新しいものを発見するのが大好きですし、日本料理の加熱のテクニックや味付け、盛り付け、その他食卓に関すること全般にはたしかに非常に面白いものがあると思います。日本の食材にしても、香辛料や香草や野菜、果物など、何か必ず一つは取り入れるものがあります。
 
フラン・パルレ:特にオマールがお好きなようですね。
アラン・パサール:オマールとはかなり深い縁があります。私はちょっと蟹の籠のようなところで生まれたものですからね。オマールは素晴らしい食材だと思います。オマールの肉質や味はいろんな味付けを受け付けてくれますから。味付けや調理もさることながら、私が好きなのはその加熱です。私は火の男でしてね。料理で大切なのは自分が何者であるかきちんと判断することだと思います。ソース屋なのか、ロースト屋なのか、混ぜ物屋なのか。私は今のところ正真正銘のロースト屋だといえます。焼くのが好きですからね。幸いなことに祖母が焼き物の名人だったんです。祖母は焼き物が大好きでした。火への情熱がいつも心の中で燃えさかっていました。炎に完全に魅入られていたんです。祖母は私に火を飼いならし、調教する秘訣を教えてくれました。そして食べ物を焼くことを教えてくれたんです。私にとってオマールの加熱は一つの芸術だといえます。要領をよく飲み込んでかからねばなりません。一通りのアプローチを経るんです。距離をおいて見ることも必要です。一種の集中力が要ります。でなければオマールのローストはごくつまらないものになってしまいます。これはほとんどミサに近いものなんです。よくよくオマールを見つめてその大きさを覚えておかねばなりません。するとオマールの素晴らしい肉を守るための焼き時間のタイミングがわかります。まるで果肉か髄質のようにぷるぷるとして、もろくて繊細で柔らかいですから、この肉の柔らかさを守るのは一つの立派な学問だと言いたいくらいです。で、私の場合、それを教えてくれたのは祖母でした。
 
フラン・パルレ:ブルターニュのオマールしか使わないのですか。この地方のほかの食材は使いますか。
アラン・パサール:ブルターニュだけです。島嶼部のものをよく使います。特にグレナン諸島などですね。ここの島々はオマールにとって居心地がいいんです。水温がちょうどいいし、えさになる水棲動物が多いのでびっくりするほどいい味に育っています。
 
フラン・パルレ:仕入れはご自分でなさるのですか。
アラン・パサール:買い物ができるというのは、物がよく見えるいうことです。材料を見る眼が決め手です。魚を例にとると、えら、目などの外観がどうかということで素材の良し悪しがわかります。確かに私はうるさいですよ。子供のうちに身に付いたことですからね。ブルターニュでは確かにうるさいんです。漁港の近くに生まれて早くからいいものを見て育っていますから。立派な素材は料理人を休ませてくれるものです。いい材料があれば何も起こりようがありません。上手に焼いて新鮮なバターをひとひら乗せて、塩をぱらぱら振るかオリーブオイルをかけるかして、これだけです。物事をややこしくすることはありません。
 
フラン・パルレ:それでもパサールさんは26歳でミシュランの2つ星をもらっていますね。
アラン・パサール:そのとおりです。ミシュランは私に甘かったんですね。というより私が複雑な料理をしないところが彼らの気に入ったんでしょう。当時私は伸び盛りでしたし、加熱と味付けに大いに力を注いでいました。塩とスパイスの開拓にも努めていました。またこの頃はよく手直しをした時期でした。ソースの味を直したり、質感や、舌ざわりを変えたりしていました。これも一つの学問なんですよ。
 
フラン・パルレ:加熱の逆で、生ものにもやはり興味がありますか。
アラン・パサール:ありますとも。惹かれる料理はありますね。パリのアルぺージュではラングスティーヌのカルパッチョのキャビア添えという定番料理があります。また刺身も味によっては好きですね。貝類も帆立貝などは好きです。
 
フラン・パルレ:味の変遷についてどうお考えですか。
アラン・パサール:変化を起こしてゆくのは私たち料理人の仕事ではないかと思います。ちょっと演劇のようなものです。観客が待っているのは感動、驚きです。皿の中に入っている小さな手品です。このごろではフランス料理のマジックを本当の知的なクリエーションを通じて表現することができるようになりました。お客が求めているのはアクセントのある料理、個性のある料理、真実の料理です。お客は通人であって、料理に関心のある人たちです。この人たちがアルページュの扉をくぐるときには、すでによその三ツ星レストランを全部とかなりの2つ星と一つ星レストランの扉をくぐってきていることを頭におかねばなりません。この人たちは店に身を任せ、その場の雰囲気と料理に魅了されたいと望んでいるのです。今日ではクリエーターの料理、人間の料理に人気が集まっていると思います。背後でシェフが仕事をしていること、そして常にちょっとした工夫で差をつけようとしていることを人々は意識しています。
 
フラン・パルレ:かなり季節に合わせて仕事をなさいますか。 
アラン・パサール:うちでは季節感を強く打ち出しています。素材を季節に合わせて使うのはとても大切なことです。季節が終わったら使うのをあきらめねばなりません。次の年に同じものをまた見つけたときの喜びは大変なものです。これはとても基本的なことなので、私はずっと守ってゆくつもりです。お客さんは12月に苺を出されるのにはちょっとうんざりしていると思いますよ。私はナンセンスだと思います。冬の苺には旬の苺の香りがありません。そんなことありっこないんです。気象条件が違うし、熱い国から取り寄せたとしても土壌がありません。苺は私にとってやはり季節の素材です。
 
フラン・パルレ:買い物の途中で素材を見てからメニューを考えることはありますか。
アラン・パサール:私の創造性の中心は市場にあります。色や形にとても影響されやすいものですから。果物の形や甲殻類の輪郭はその香りに加えて大きなインスピレーションを与えてくれます。果物の色はまさに啓蒙的ですし、真っ白な玉ねぎなどを見ると、この素材の周りに創造性が生まれるのが感じられるほどです。料理が産まれるのは産直の売台に並んでいる食材を見ているときが多いんですよ。
 
フラン・パルレ:お客さんがワインを選ぶときはどのようにアドバイスするのですか。とくにワインの好みはありますか。
アラン・パサール:私は料理のシェフの中ではワイン好きなほうです。アルページュでは素材の仕入れはすべてソムリエと一緒に行っています。私にとって興味があるのは、ボルドーやブルゴーニュのリストはもちろんですが、フランスのそれ以外の産地をお客様に教えて差し上げることです。南西地方とか、ラングドックとかルシヨンとか、コルシカワインとかですね。お客様は一つ賢くなったということで喜ばれますし、生産者も話題になるのを喜ぶものです。私自身はとくにこれが好きというものはありません。私が好きなのはいい仕事です。いい作品の裏には努力している人間の存在が感じられます。自分の仕事を愛している人間の姿です。
 
1999年12月
インタヴュー:エリック・プリュウ
翻訳:大沢信子



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