映画監督ベルナール・ラップは、ジャーナリスト出身で、フランスのテレビ局France2のニュースキャスターであったことで有名です。また、20世紀の作家たち260人をとりあげる番組『Un siècle d’écrivains』をプロデュースし、司会も務めていました。彼の三作目の映画『Pas si grave』は、フランスで3月5日に公開され、今年のフランス映画祭横浜(6月18日)で上映されました。宣伝のため来日したベルナール・ラップ監督に話を聞きました。
フラン・パルレ:『Pas si grave』はあなたの過去の作品『私家版』や『趣味の問題』とは全くスタイルが違いますが、なぜですか?
ベルナール・ラップ:シリアスな映画を作ってきたので、世間の私に対するイメージが偏っていると感じていました。ですから、今度は深刻なテーマをもっと軽いタッチで描きたいと思いました。今回は、一人の息子としての生き方、兄弟との関係、自分探し、それから異性を愛するか同性を愛するかといった性のアイデンティティー、ミュージシャンとしての才能への自信などを通して、ストーリーが展開していきます。これらのことを軽快に、陽気に、明確に、楽観的に描こうと思いました。なぜなら、私自身、時々この世の中をそんな風にポジティブに考えたりするからです。題名を『Pas si grave』にしたのもそういう理由からです。明るいストーリーですよ。舞台をスペイン南部に選んだのもそのためです。このストーリーの構想はずっと前からありまして、『趣味の問題』を製作する以前にシナリオを書き始めていました。シナリオの中には、私のプライベートな話がたくさん登場します。風変わりなことや、びっくりするような出来事も、実際に私自身が体験したり、目の当たりにした実在の話です。ですから、この話はずっと昔から私の心の中にあったものなのです。私がこの映画を通して言いたいことは、「家族間の恩と義理」についてです。ストーリーの初めの方では分からないかもしれませんが、このことが一貫したテーマとなっています。フランソワーズ・ドルトが書いたものにヒントを得ました。生みの親、または育ての親に対して、誰しも恩義を感じているものです。しかし、この恩は必ずしも返さなくてはいけない恩ではないのです。ですが、自分が受けた恩を次は自分の子供に与えてあげる。それが両親に恩を返すことになるのです。映画の中で、父親が死の直前に、子供たちに「最後に何か一つ、自分に恩を返してくれ」と言います。しかしこの言葉の本当の意味は、父親が最後に子供たちに素晴らしい贈り物を与えようとしていることなのです。物語のあらすじはざっとこんな感じです。
ベルナール・ラップ:ええ。『Pas si grave』が表現方法の違いはあっても本質的にシリアスな映画であるのは、スペイン戦争について語っているからでもあります。私は長い間、この戦争に関心がありました。あまりにも多くの戦いが目の前で繰り広げられ、若者たちが祖国を捨て、決して戻ることのなかったヨーロッパの悲劇の中でも稀な同族間の市民戦争です。肉親の間で殺しあう、あまりにも残虐な戦争を体験し、多くの人は祖国に帰らないと決めたのです。フランスには、スペインからの亡命者がたくさんいます。彼らに感動を突き動かされて、映画の中の育ての父パブロ役を作りました。また、この役には私の父親のキャラクターをたくさん取り入れました。父は、スペイン人ではありませんが、映画の中のパブロのようにちょっと変わった建築家でした。