『私がやりました』「殺したのは私です」いったい誰が、覚えもない殺人の罪を被るというのだろう?現実世界では考えられないことが映画の中では起こり得る。そして、自分こそが犯人だと、犯罪者であることを主張し始めるのだ。舞台は1935年のパリ。女性には参政権がなく、自分の銀行口座を持つ自由も許されなかった男性優位の時代に手を取り合って生きる2人の女性――女優のマドレーヌ(ナディア・テレスキウィッツ)と弁護士のポーリーヌ(レベッカ・マルデール)の生活は、家賃を払えない状態が続くほどの困窮ぶり。そんなとき、映画プロデューサー殺人の容疑をかけられたマドレーヌに、ポーリーヌは一世一代の筋書きを提案する。男性の力にすがることなく、女性自らの力で名声を勝ち取ったマドレーヌとポーリーヌは一躍有名人に……しかしそこで話は終わらない。真犯人のオデット(イザベル・ユペール)の登場から、コメディがさらに格上のコメディへ。フランソワ・オゾン監督が描く女性たちは、一筋縄ではいかないところが魅力的。コメディという形式を通して届けられるメッセージが、今日という社会を生き抜くための秘訣を教えてくれる。映画で思い切り笑ってすっきりしたら、前を向いてしっかりと生きていこう。(Mika Tanaka)監督・脚本: フランソワ・オゾン出演: ナディア・テレスキウィッツ、レベッカ・マルデール、イザベル・ユペール、ファブリス・ルキーニ、ダニー・ブーン、アンドレ・デュソリエ2023年/103分/フランスMadeleine de Francois Ozon avec Nadia Tereszkiewicz, Rebecca Marder,Isabelle Huppert, Dany Boon, André Dussolier, Fabrice Luchini; 2023, France, 103 min
『私がやりました』 Madeleine