『ダンサー イン Paris』映画の始まりは、「ラ・バヤデール」。パリ・オペラ座のバレエ公演の様子が丹念に描かれる。主役を演じるエリーズ(マリオン・バルボー)は、舞台裏で自分の恋人が他のダンサーとキスしているところを見てしまう。乱れる心を制しきれなかった彼女は、ジャンプの着地に失敗し、足首に致命的な怪我を追ってしまう。6歳の頃から母親に手を引かれてバレエのレッスンに通っていたエリーズ。母亡き後もバレエを続け、エトワールまであと一歩というところだった。「完治するかどうかわからない」と診断する医師。これからどのように生きていけばよいのか……パリとブルターニュを舞台に繰り広げられる1人のダンサーの再生の物語を、クラピッシュ監督は、美しく、そして力強く描いた。彼女の本質を見抜き、手を差し伸べるのは、ブルターニュでアーティストに稽古場と宿泊場所を提供するレジデンスのオーナー、ジョジアーヌ(ミュリエル・ロバン)。アルバイトで訪れたこの地で、彼女はコンテンポラリー・ダンスの魅力を知る。怪我によって自信をなくしたエリーズの「弱さ」に可能性を見出すのは、振付師のホフェッシュ・シェクター(本人役で出演)。「不完全でいい。踊り方を変えるんだ」という彼の言葉に、エリーズはまっすぐ向き合う。そして本作は「父と娘」の映画でもある。言葉と理屈の中で生きる弁護士の父アンリ(ドゥニ・ポダリデス)は、言葉のない世界で踊るエリーズのことを理解できずにいる。しかし「愛」はいつか必ず理解という出口へ導いてくれることを、映画は教えてくれる。(Mika Tanaka)監督:セドリック・クラピッシュ出演:マリオン・バルボー、ホフェッシュ・シェクター、ドゥニ・ポダリデス、ミュリエル・ロバン、ピオ・マルマイ、フランソワ・シヴィル、メディ・バキ、スエリア・ヤクーブ2022年/118分/フランス・ベルギーEn corps de Cédric Klapisch avec Marion Barbeau, Hofesh Shechter, Denis Podalydès, Muriel Robin, Pio Marmaï, François Civil, Souheila Yacoub; 2022, France, Belgique, 118 min
『ダンサー イン Paris』 En corps