『ジェーンとシャルロット』繊細な人だったと、あらためて思う。その一方で、大胆さも兼ね備えていた。アーティストとしての資質、時代のアイコンとしてのセンス、そして3人の娘の母親としての戸惑いと大きな愛……ジェーン・バーキンの人生の一片を、そのはかなさと揺るぎない存在感をカメラにおさめたのは、彼女の娘のひとり、シャルロット・ゲンズブール。彼女もまた、自身の繊細な感性が壊れないように細心の注意をはらいながら、母であり先輩であるジェーンの輪郭をとらえていったのだろう。船に開いた穴からさす陽の光……そんなさりげないワンシーンが映画を見終えた今でも心の片隅に残っている。映画の始まりは、ジェーンの日本公演。日本に親愛と敬意を表してくれた人だった。2011年の東日本大震災の直後、復興支援のために来日コンサートを開催してくれたことがつい最近のことのようによみがえる。母を知りたい、自分を知りたいというシャルロットの思い。それをしっかりと受け止める母・ジェーン。”ドキュメンタリー”より”エッセイ”という呼び名の方が似合う作品だ。本作の日本公開を間近に控える2023年7月16日、ジェーン・バーキンは天に召された。娘のシャルロット・ゲンズブールの誕生日(7月21日)まであと数日だったのに、という気持ちがぐっと込み上げてくる。(Mika Tanaka)監督:シャルロット・ゲンズブール出演:ジェーン・バーキン、シャルロット・ゲンズブール、ジョー・アタル2021年/92分/フランスJane par Charlotte documentaire de (et avec) Charlotte Gainsbourg avec Jane Birkin; 2021, France, 92 min
『ジェーンとシャルロット』 Jane par Charlotte