『世界のはしっこ、ちいさな教室』ブルキナファソの新人教師、サンドリーヌ。初めての赴任地は、携帯電話の電波の届かない遠い場所。6年間、2人の子供と離ればなれで暮らさなければならない。50人の生徒たちの間では5つの言語が飛び交い、フランス語での会話が成立しない。「生きていくため」「自由になるため」に必要な公用語(=フランス語)を、サンドリーヌは彼らに一から教える。スヴェトラーナは、ロシア連邦サハ共和国の出身。彼女の職場は、移動式の遊牧民学校。トナカイのソリに乗って、子供たちが住むテントを訪れる。彼女が教えるのは、ロシアの義務教育過程のほか、魚やトナカイの捕まえ方だ。生徒たちに、シベリアの大地に根を張るエヴェンキ族のルーツに誇りを持って生きてほしいと彼女は願う。そして、水の上に浮かぶ小さな船の上で教鞭を取るのは、バンクラデシュのタスリマ。ここは1年の半分が水没する地域で、彼女自身も洪水の被害を経験している。ボートスクールに通う生徒たちが、教育を受ける権利を失わないよう、彼女は努力を惜しまない。娘の結婚を望む母親を説得し、生徒を無事に中学校へと送り出すまでの過程をカメラが追う。国も文化も違う3人の教師たちの、教育への情熱と信念。そしてその思いを受け止める子供たちの純粋さ。「学ぶ」ということは、なんと尊いことか。登場する教師はすべて女性、そして本作の監督も女性なのは、偶然だろうか。映画全体に漂う柔らかくてあたたかい感触は、お母さんに抱っこされているときの安堵感に似ている。「学ぶ」ということはもしかすると、「愛を受け止める」ことに通じるのかもしれない。(Mika Tanaka)監督:エミリー・テロンナレーション:カリン・ヴィアール出演:サンドリーヌ・ゾンゴ、スヴェトラーナ・ヴァシレヴァ、タスリマ・アクテル2021年/82分/フランスÊtre prof d’Émilie Theron avec la voix de Karine Viard; 2021, France, 82 min
『世界のはしっこ、ちいさな教室』 Être prof