『プチ・ニコラ パリがくれた幸せ』1955年のパリ。カフェで談笑する2人の作家から、小さな夢の1歩が始まる。イラストレーターのジャン=ジャック・サンペ(声:ローラン・ラフィット)は、新聞に掲載中のイラストをもとに物語を書いてほしいと、盟友のルネ・ゴシニ(声:アラン・シャバ)に相談を持ちかけていた。「君が物語を作って、僕が絵を描くのさ」。そこには、愛らしい小学生の男の子のイラストが……こうして「プチ・ニコラ」は誕生した。サンペとゴシニの交流と創作の過程が、ゆったりとしたテンポのアニメーションで流れる。その2人の間を行き来するのが、妖精のようにちっちゃなプチ・ニコラ(声:シモン・ファリュ)。ゴシニのタイプライターの上で、サンペのアトリエの片隅で、ニコラは自分の生みの親たちに話しかける。ニコラと話しながら、自分たちの少年時代を振り返る2人。控えめだけれど内に情熱を秘めるゴシニには、ホロコーストの犠牲になった親族がいた。楽しかった少年時代の記憶をプチ・ニコラを通して再現することは、その傷を癒すことでもあった。おしゃべりで音楽好きのサンぺの過去も決して明るいものではなかった。酒癖の悪い父と愛情を表現してくれない母。でも、サンペには寄り添ってくれた祖父がいた。おじいちゃんといるときの「守られているなと感じるあったかい感触」。サンぺはプチ・ニコラを描きながら、幸せな少年時代を追体験していたのだ。サンペとゴシニの人生をはさんで、2人が生み出した「プチ・ニコラ」のいくつかのエピソードが流れる。ニコラの家にテレビが届いた日。親元を離れて向かう臨海学校。友達と学校をサボった日……いたずら好きでやんちゃなニコラたちが、本から飛び出してスクリーンの中をかけずり回っていく。なんていう解放感!映画の脚本はゴシニの娘であるアンヌ・ゴシニが手がけ、サンぺ自身もグラフィック・クリエイターとして本作に関わった。彼は2022年6月のアヌシー国際映画祭でのクリスタル賞(最高賞)受賞を見届けた後の8月11日、89歳で永眠。天国で再会したゴシニと、今はどんなおしゃべりをしているだろうか。(Mika Tanaka)原作:ルネ・ゴシニ、ジャン=ジャック・サンペ監督:アマンディーヌ・フルドン、バンジャマン・マスブル出演者:アラン・シャバ、ローラン・ラフィット、シモン・ファリ2022/86分/フランスLe Petit Nicolas : Qu’est-ce qu’on attend pour être heureux ? d’Amandine Fredon et Benjamin MassoubreScénario : Anne Goscinny, Michel Fessler et Benjamin Massoubre, d’après l’œuvre de René Goscinny et Jean-Jacques SempéVoix de Simon Faliu, Alain Chabat, Laurent Lafitte; 2022, France, 86 min
Le Petit Nicolas : Qu’est-ce qu’on attend pour être heureux ? 『プチ・ニコラ パリがくれた幸せ』 『(プチ・ニコラと副題の間は半角アケ)』
投稿日 2023年6月5日
最後に更新されたのは 2023年6月12日