Crédits : © AGAT FILMS & CIE – France 3 CINEMA – 2016 『海辺の家族たち』舞台は、フランスの小さな漁村。観光地として栄えるだけの魅力がありながら、注目されることなく寂れつつある。ここがアンジェル(アリ アンヌ・アスカリッド)の故郷だ。女優としてパリで暮らす彼女は、悲しい事件があったことで故郷に背を向けてきたが、父親が倒れたことを 機に20年ぶりに帰郷することになった。迎えてくれたのは、二人の兄だ。上の兄のアルマン(ジェラール・メイラン)は故郷に残り父親のレストランを継いでいる。下の 兄のジョゼフ(ジャン=ピエール・ダルッサン)は作家として伸び悩み、年の離れた婚約者との関係も壊れかけている。この地に暮らす人々と、この地か ら離れた人々が再会し、止まっていた時計が動き始める……ロベール・ゲディギャン監督が撮影の地に選んだのは、マルセイユに近い Méjean Calanque(メジャン入り江)。海辺から見上げると列車が高架橋を通過する素朴な風景は、印象派の絵画のよう。そんな静かな入江の陰に、肩を寄せ合い息を潜める3人の難民 の子供たち。彼らの登場が、ひんやりとした質感の映像に熱を加えていく。少女のために着替えの服を用意するアンジェルの穏やかな表情が忘れられない。新し い生命と去り行く生命。生命はめぐり、苦しみや悲しみも絶えず新しい感情と入れ替わっていく。この柔らかく温かい渦の余韻を感じなが ら、不安な日々を乗り越えたい。(Mika Tanaka)監督・製作・脚本:ロベール・ゲディギャン、出演:アリアンヌ・アスカリッド、ジャン=ピエール・ダルッサン、ジェラール・メイラン、ジャック・ブーデ、アナイス・ドゥムース ティエ、ロバンソン・ステヴナン ほか2016年/フランス/107分La Villa de Robert Guédiguian avec Ariane Ascaride, Jean-Pierre Darroussin, Gérard Meylan, Jacques Boudet; 2016, France, 107 min

『海辺の家族たち』 La Villa
