『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』 L’incroyable histoire du Facteur Cheval
『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』
 
偏屈で寡黙な1人の男がいる。名前はシュヴァル(ジャック・ガンブラン)。郵便配達員として働く彼は、仕事中に不思議な形をした石につまずく。普通の人々には聞こえない声がシュヴァルには聞こえたのだろう。彼は道端の石を集めて小さな宮殿を創り始める。小さな王女様のための”おとぎの国の宮殿”だ。美術や建築を専門的に学んだこともない彼が、43歳で授かった娘アリスのために、33年の歳月を費やして完成させた遊び場は、幅26メートル、高さ10メートルの大きさだった。
  フランス南東部の小さな村、オートリーヴに実在する”シュヴァルの理想宮(Palais idéal du facteur Cheval)”は、フランス政府指定の重要建造物で、ピカソやアンドレ・ブルトン等、多くの人に賞賛されてきた。映画では実物が撮影に使われ、建造中のシーンは未完成となる部分をCGで少しずつ消すという緻密な作業がなされた。美しいものがどのような過程を経て生まれるのか、奇跡がどのように起こるのか、この映画はドキュメンタリーのように、淡々と映し出す。そして気づかされる。美は、そして奇跡は”愛”なのだと。シュヴァルの突拍子もない夢を支えた妻の不動の愛、シュヴァルが子供達に捧げた不器用な愛、美しいものを偏見なく受け入れる周囲の人々の素直な愛、愛するものを失ったときのたとえようもない喪失感……フランスがL’amourの国であること、L’amourなしでフランス映画を語ることができないことをあらためて知る。(Mika Tanaka)
 
監督:ニルス・タヴェルニエ
出演:ジャック・ガンブラン、レティシア・カスタ、ベルナール・ル・コク、フロランス・トマサン
2017年/105分
 
L’incroyable histoire du Facteur Cheval de Nils Tavernier Avec Jacques Gamblin, Laetitia Casta, Bernard Le Coq, Florence Thomassin; 2017, 105 mn
 
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