『幸福(しあわせ)』この映画が公開されたのは、1965年。それから、50年ほどが過ぎた。男性のわがままを許すことを強要され、受動的に生きるしかなかった女性たちの状況は、改善されたのだろうか?女性は仕事をし、家事をこなし、夫を気遣い、こどもたちを育てる。すべてがこなせて当たり前……映画の中で、テレーズ(クレール・ドルオー)は、休む間もなく動いていた。夫のフランソワ(ジャン・クロード・ドルオー)に異を唱えることなく、愚痴をこぼすでもなく、野に咲くひまわりのように明るい。こんな良妻賢母に支えられる家族は絵に描いたような「幸福」に満ちている。でも、「幸福」の維持にはたゆまない努力が必要だ。その努力のすべてを女性が担わなければいけないとしたら、あなたはどう思う?映画は、家族がピクニックを楽しむシーンで始まる。そして、家族がピクニックを楽しむシーンで終わる。始まりと終わりの間のドラマを知らない人から見ると、まさに幸福な家族。50年近く経った今も、このシーンは普遍的だ。ということは、幸せそうに見える世の中の多くの家族にもいろいろな秘密があって、それぞれが「幸福」を装うためのたゆまない努力をしているということなのかもしれない。(Mika Tanaka)出演:ジャン=クロード・ドルオー、クレール・ドルオー1964年/80分Le Bonheur d’Agnès Varda avec Jean-Claude Drouot, Claire Drouot, Marie-France Boyer; 1965, France, 80 mn
『幸福(しあわせ)』 Le Bonheur