『永遠のジャンゴ』ミュージシャンには、二通りのタイプがある。問題意識が強く、社会活動に積極的なタイプ。そして、社会の動きを気にすることなく、芸術の頂点を目指すタイプ。彼はどちらのタイプだったのだろうか……ジャンゴ・ラインハルト。ベルギー出身、ジプシーの旅芸人を両親に持つ彼は、大やけどで障害を負った手でありながら、独自の演奏で多くのジャズファンを虜にし、多くのギタリストから崇拝されてきた。ステージから降りると、釣りをたしなみ相棒の猿・ジョコと奔放に過ごすジャンゴ(レダ・カテブ)。彼を支えるのは、交渉に長けた母、理性的な妻、そして彼の芸術を理解する愛人だ。強い女性たちに囲まれたジャンゴは、第二次世界大戦にも、ナチスの動きにも無頓着のようにみえた。しかし、大切なジョコを失い、ナチスに虐げられるジプシー仲間たちを目の当たりにし、彼の心で何かが変わり始める。「ジャンゴ」という名前はジプシーの言葉で「私は目覚める」という意味。エチエンヌ・コマール監督はこの言葉に思いを込め、原題をそのまま”Django”とした。ジプシー文化の中で育ったジャンゴが神父と知り合い、教会のパイプオルガンを奏でるシーンは、まるでステンドグラスから差し込む陽の光のようにきらきらと輝いている。映画のラストで画面いっぱいに映し出される多くの写真は、すべて実在の人物によるもの。身体測定のときに使われた、フランスのジプシーたちの登録写真だ。(Mika Tanaka)監督:エチエンヌ・コマール出演:レダ・カテブ、セシル・ドゥ・フランス2017年/117分À l’écranDjango d’Étienne Comar avec Reda Kateb, Cécile de France, Bea Palya; 2017, 117 mn
『永遠のジャンゴ』Django