水曜日 2014年7月9日
フェリックス・ヴァロットン(1865-1925)は、スイス・ローザンヌに生まれ、フランス・パリで活躍した画家である。ボナール、ヴュイヤール、ドニといった画家たちとともに前衛芸術集団であるナビ派に参加し、ゴーガン、ゴッホ、セザンヌや、当時の前衛的な芸術家たちと交流を深めた。しかし、様々な芸術上の流派と関わりながらも、彼は独自の道を辿った。白と黒のみの鮮烈なコントラストの革新的な木版画や、数多くの油彩画は、独自の雰囲気を漂わせている。胸騒ぎのする風景、不安な室内、静的な人物たちといった、冷たい印象を与える世界を描きながらも、その外観の下には、クールなエロティシズムや抑圧された暴力性といったものを感じさせるのである。彼の作品の持つ多面性や、謎に満ちた魅力は、今の私たちにとっても、斬新で革新的なものである。 本展は、そんなヴァロットンの日本初の回顧展である。これまで、ヴァロットンの作品をまとめて見る機会は非常に限られていた。今回は、約60点の油彩画と約60点の版画、合計約120点の作品が一堂に会する貴重な機会となる。 (…)