金曜日 2004年8月6日
外国の演劇作品が、ただその生まれ故郷でしか価値を持たないとしたら、世界中の演劇はきわめて貧しいものになっていたにちがいありません。ある文化圏の演劇は、外国公演のような直接的な舞台そのものであろうと、あるいは翻訳劇として上演する場合のような間接的上演であろうと、いつの時代にも異なる文化圏に影響を与えてきました。 今月はこの5月から6月にかけて東京で上演された作品を通して、日本でフランス演劇をどのように受け入れていくべきか、ふたつの文化圏がどのように接続されていくべきなのかを考えてみたいと思います。
まず、ふたつの文化が直接的に衝突するケースとして恰好の例となったのは、ギィ・フォワシィ・シアターがアヴィニョン市の常設劇団、劇団ラ・タラスクを招いて行った『シカゴ・ブルース』です。この公演は、ひとつの同じ作品をギィ・フォワシィ・シアターと劇団ラ・タラスクの双方のヴァージョンで同時に見られる、という企画です。もちろんタラスク版はフランス語上演ですから、先にギィ・フォワシィ・シアター版を見て、作品の内容を頭に入れてもらった上で、という段取りになります。タラスク版上演に際しては、字幕は用いま