木曜日 2005年1月6日
演劇フラヌリー 第8回
病と身体 11月はとても考えさせられる舞台に出会いました。俳優座のラボ劇場公演、エルヴェ・ギベール作『飛べ、ぼくのドラゴン』です。ラボ公演というのは、六本木の俳優座が同劇場の上階にある稽古場を使って行う小規模な公演で、これまでにも英米の現代作品を実験的に上演しています。フランス作品は今回が初めてです。 エルヴェ・ギベールは91年にHIV感染がもとで死んだ小説家です。エイズと同性愛を主題にした衝撃的な小説『ぼくの命を救ってくれなかった友へ』で一躍有名になりました。日本語にも、その作品をはじめとしていくつかの作品が翻訳紹介されています。そのギベールが戯曲を遺していたことは、私も不勉強で知りませんでした。戯曲といっても『飛べ、』は特殊なテクストです。25景からなる場面が断片的に並べられていて、一貫した筋はありません。孤独な男が見る夢のような光景のなかで、彼とさまざまな人物がかかわっていく場面が展開していきます。この男には作者ギベールが投影されていると考えていいでしょう。世界との違和をかかえていて、絶望しているふうでもあり、さまよっているふうでもあります。カフカ