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『犬の裁判』 Le procès du chien
Le procès du chien
Le procès du chien
Crédits : ©︎BANDE À PART - ATELIER DE PRODUCTION - FRANCE 2 CINÉMA - RTS RADIO TÉLÉVISION SUISSE - SRG SSR - 2024

『犬の裁判』
「飼い犬の弁護を頼みたい」
もしもあなたが弁護士で、あるときこんな依頼を受けたらどうしますか?
舞台はスイス。成果を出せず、セクハラを受け、窮地に立たされる弁護士のアヴリル(レティシア・ドッシュ)は、家政婦の顔に噛みつき致命的な傷を負わせた犬・コスモス(コディ)の弁護を引き受けることになる。
 レティシア・ドッシュ Laetitia Dosch
レティシア・ドッシュ Laetitia Dosch
Crédits : 2025年3月21日、横浜フランス映画祭2025会場にて撮影 ©︎Mika TANAKA

依頼に訪れたのは、コスモスの飼い主・ダリウシュ(フランソワ・ダミアン)だが、法廷に立つのはコスモス自身。ワンワンと吠えるコスモスに向かい「静粛に」と裁判官が告げると「犬のコスモス、姓はなし、男性、2010年1月17日……」と人定質問が始まる。

 シュールなシーンである反面、絵空事として笑い飛ばせない不思議な感覚が残るのはなぜだろう。映画の元となった犬は実在する。犬が噛みつきを繰り返したため、飼い主が被告となり、町ぐるみで判決をめぐる議論が繰り広げられたのだ。被告を飼い主から犬自身に変え、軽やかな展開に人権の精神を取り入れたレティシア・ドッシュ監督のセンスが冴え渡る。コ スモスを危険とみなす市民と擁護する市民の衝突、裁判を追いかけるマスコミの取材に応じるアヴリル。テレビに映った自分の甲高い声に 落ち込む彼女の理解者となる1人が、小さな隣人・ジョアキムだ。まだ親の庇護が必要な年頃の少年は、母親でも恋人でもないアヴリルを慕い、時折彼女の部屋を訪れる。 彼女とコスモスの力になろうと情報を集め、傍聴人として法廷を訪れる健気さはどこから来るのか……親から虐待される子供、 視覚障がい者、顔に傷を負った女性。映画には多くの弱者が登場するが、決して屈したり泣き寝入りしようとはしない。女性であり、移民であり、顔に傷を負うという悲劇に見舞われた原告のロレネが選んだその後の人生を知ると、私たちの未来は決して絶望に値するものではないという気がしてくる。
「これは犬1匹の問題ではありません。私たちの未来に関わる問題です。それぞれの個性が尊重される世界にするために、未来の扉を開けましょう」
アヴリルの最終弁論が力強く優しい。(Mika Tanaka)
 
監督:レティシア・ドッシュ
出演:レティシア・ドッシュ、フランソワ・ダミアン、ジャン=パスカル・ザディ、アンヌ・ドルヴァル、コディ(犬)
2024年/スイス・フランス/フランス語/81分
日本語字幕: 東郷佑衣
 
Le procès du chien de et avec Lætitia Dosch avec François Damiens, Jean-Pascal Zadi, Anne Dorval, Kodi le chien; 2024, Suisse, France, 81 min
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