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La francophonie au Japon

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『けものがいる』 La bête
『けものがいる』  
 永遠の愛は存在するのだろうか。たとえ生まれ変わっても、前世に愛した人を探し続けることができるのだろうか?
 2044年。ガブリエル(レア・セドゥ)は、大半の仕事をAIが担い失業率が67%に達した社会で生きている。自分には知識も能力もある。しかし、AIと同じレベルで働くためには、「DNAの浄化」というセッションを受けなければならない。DNAの浄化とは、現世の潜在意識に刻み込まれた前世からのトラウマを消し去ること。「我々は、君の感情の排除を手助けできるのだ」。面接官のAI( 声:グザヴィエ・ドラン)の乾いた声に戸惑いながらも、職を得るためにと、ガブリエルはセッションに身を投じる。セッションでは、前世の記憶を再現しなければばならない。浄化のために必要なのだ。それがつらい作業であるとしても。
 1910年、パリ。ピアニストとして活躍するガブリエルには、人形製造工場を経営する夫(マルタン・スカリ)がいる。しかし、常にある不安(不吉な予感)にさいなまれ心は晴れない。ロンドンからやってきた青年ルイ(ジョージ・マッケイ)に紹介され、予知能力を持つ不思議な女性(エリナ・レーヴェンソン) を訪れると、彼女はこう語る。「けものがいる」と。「男がひとり見える。彼は夢の中でしか愛を交わせない」 。
 2つめのセッションは2014年、ロサンゼルス。ガブリエルは女優を志している。日々の生活は決して華やかではない。建築家の豪邸で留守番の仕事をしながら、オーディションに参加する毎日。心にぽっかりと空いた穴の正体がつかめず、孤独を紛らわそうとクラブに通うが、友達も恋人もできない。あるとき、偶然みつけた「ジーナの占い」というサイトにアクセスする。占い師のジーナ(マルタ・ホスキンス) はオンライン越しにこう語る。「あなたが心配。彼は夢の中でしか愛を交わせない 」
 ラブ・ストーリーとSFとスリラーと……さまざまな要素が混ざり合いながら、ゆらゆらとした情緒を醸し出す。人形とハト、蝶々夫人やロイ・オービソンの曲といった小道具、冴え渡る役者たちの演技をあますことなくとらえた映像に息を呑む。
 ベルトラン・ボネロ監督は映画の中で、1910年のパリの大洪水と2014年のロサンゼルスの地震を取り上げている。そして2044年に起こるのは、天災ではなく人災。ボネロ監督の警鐘を、私たちはしっかりと受け止めることができるだろうか。(Mika Tanaka)
 
監督・脚本:ベルトラン・ボネロ
出演:レア・セドゥ、ジョージ・マッケイ、ガスラジー・マランダ、ジュリア・フォール、ダーシャ・ネクラソワ、面接官(声)グザビエ・ドラン
2023年/フランス・カナダ/英語語・フランス語/146分
 
La bête de Bertrand Bonello avec Léa Seydoux, George MacKay, Guslagie Malanda, Julia Faure, Dasha Nekrasova, Xavier Dolan (voix); 2023, France, Canada, anglais, français, 146 min
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