La nouvelle femme Crédits : © Geko Films – Tempesta - 2023 『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』原題は”La nouvelle femme” 、「新しい女性」だ。映画の舞台となった1900年代、教養があり自立した女性をこう呼んでいた。マリア・モンテッソーリ(ジャスミン・トリンカ)は、この言葉を体現するような人物だっ た。しかし、新しい女性であり続けるために彼女が払った代償は決して小さなものではなかった。男性に劣ることのない知識や技量、鋭い観察力を持つマリアは、一般の学校では受け入れられなかった子供たち(障害を 持つ子供たち)を教育する研究所を運営し、めざましい成果を上げていく。しかし、称賛を浴びるのはいつも男性である研究所のパートナー、 ジュゼッペ。それどころか、彼女には報酬や給与は一切ないのだ。そんな彼女の光となるのが、もう1人の「新しい女性」、リリ(レ イラ・ベクティ)。結婚し、子供を産み大切に育てていたリリだが、娘のティナが障害児であることがわかり、双方の親の判断で離縁させられ る。リリはティナ(ラファエレ・エスポジト)を母親に預け、自身はクルチザンヌ(高級娼婦)として人生を再スタートする。ティナの存在を隠すためパリからローマへやって来たリリは、マリアの研究所を訪れる。ティナを預かってもらい、自分 は仕事に専念するためだ。出会った当初は反発し合っていたかのような2人だが、距離は徐々に縮まり、いつしかお互いになくてはならない存在となっ ていく……モ ンテッソーリ教育の祖であるマリアは、決して無敵で完璧な女性ではなかった。彼女がはらむ矛盾やトラウマを丹念に描き出したのは、レア・トドロフ監督。これが初めての長編映画となる。遺伝性の病気を持った娘の誕生が、この映画の制作するきっかけだった。それゆえだろうか、子供たちの描写に愛が溢れている。子供たちのキャスティングには時間をかけ、入念にワークショップを行ったという。「障害児」といって も、その障害にはたくさんの種類があり、ひとくくりにはできない。モンテッソーリ教育が提唱する「観察」をトドロフ監督は実践し、その結 果子供たちの素晴らしい演技を引き出すことに成功したのだろう。「障害のある子供たちに多くを期待しないということは、それを見捨てるこ とになってしまうと思うのです」と語るトドロフ監督の言葉に、マリア・モンテッソーリの姿が重なる。(Mika Tanaka)監督・脚本:レア・トドロフ脚本:カトリーヌ・バイエ出演:ジャスミン・トリンカ、レイラ・ベクティ、ラファエル・ソンヌヴィル=キャビー、ラファエル・エスポジト、ピエトロ・ラグーザ、アガト・ボンゼール2023年/フランス・イタリア/イタリア語・フランス語/99分La nouvelle femme de Léa Todorov avec Jasmine Trinca, Leïla Bekhti, Rafaëlle Sonneville-Caby, Raffaele Esposito, Agathe Bonitzer; 2023, France, Italie, français, italien, 99 min

『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』 La nouvelle femme
