2011年3月11日。ミシェル・ウノーさん。写真は2015年に小 泉海岸近くで撮影した建設中の橋。 Crédits : ©︎ Mika Tanaka この日、東日本で起きた出来事は、日本 に住む私たちだけでなく、海外の人たちにも大きな衝撃を与えた。カナダ・ケベック州出身のアーティスト、ミシェル・ウ ノー(Michel Huneault)さんもその1人。彼は、2012年から被災地復興支援のボランティア活動をしながら、写真を撮影し、証言を集め、実験的な映像をつくり 続けてきた。2024年に一区切りとなったアート作品の数々、今回は日本初の展示会として私たちに届けられる。会場の左の壁面に展示されている写真 は、2012年に撮影されたもの。震災後の風景が写し出される。何一つ残されていない女川の一帯、津波の到達点を示す枯れ木、壊れて 屋根がかたむいた家、泥まみれになったミッキーマウスのぬいぐるみの笑顔が痛々しい。次の展示は2015年から2017年にかけて の、復興に突き進む姿が。建設中の防波堤、修復中の港、新しいバスケットボールコート……整然としているが、人の気配が感じられな い。そのひんやりした感触は何を物語るのだろう?色彩豊かな千羽鶴の写真。古びていないということは、今でも千羽鶴を折っている人た ちがいるということ。震災の心の傷がいまだ癒やされていないことの証なのかもしれない。集めた証言の中には、こんな家族の姿も あった。サーフィンが大好きで、震災後も海のそばに住んでいる、部屋の中はサーフィンのモチーフできれいに飾り、こどももサーフィンが 好き。でも「もうサーフィンはしない、あのときのことを思い出したくないから」……人々の心の中にある震災はまだ終わっていない、そ のことを痛感する。Crédits : ©︎Michel Huneault 「心の傷が癒やされるのには、何世代もの 時間がかかるのではないでしょうか。右肩上がりの直線ではなく、アップダウンを繰り返しながら、回復していくのだと思います」。ウ ノーさんはこう続ける。"Le temps est long et court à la fois, c’est normal”(時間というのは長いようでいて、短い。そういうもの)。だからこそ、ウノーさんは彼らを「理解しよう」「記録しよう」とする努力を続け る。それが「自分にできること」だから。震災後の人々の心を見つめ形として残す作業は、こうしてウノーさんのライフワークとなった。
本展は、入場無料。カナダ大使館入場時 には、写真付の身分証明書(パスポート、運転免許証等)が必要。問い合わせは下記まで。2025年1月17日(金)~ 4月11 日(金)カナダ大使館広報部〒107-8503東京都港区赤坂7-3-38Tel: 03-5412-6200メール: TOKYO.CC@international.gc.ca土曜、日曜、大使館休館日は休館。<カナダ大使館高円宮記念ギャラリーのサ イト>

「東北、その後 2012-2024」
投稿日 2025年2月15日
最後に更新されたのは 2025年2月18日
