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『映画を愛する君へ』   Spectateurs!
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Crédits : © 2024 CG Cinema / Scala Films / Arte France Cinema/ Hil Valle

『映画を愛する君へ』  
 主人公の名前はポール・デダリュス。そう、 1996年の映画『そして僕は恋をする』2015年『あの頃エッフェル塔の下で』 の主人公の名前だ。6歳、14歳、22歳、30歳……人生の節目節目のポールが登場し、映画との出会い、映画への思いを語る。ポールはアルノー・デプレ シャン監督自身の分身、この映画は監督の自伝的なエッセイといえる。
 映画についてのドキュメンタリーを作らない かというオファーがきっかけだった。「ドキュメンタリーの作り方はわからないけれど、フィクションの要素を取り入れたハイブリッドな形式 の映画なら撮れるのではないか?」デプレシャン監督の構想はどんどん膨らみ、本作が完成した。おばあちゃんに初めて映画館へ連れて行って もらって観た『ファントマ 危機脱出』、そのとき「自分の居場所をみつけた」と感じたこと。テレビ画面に流れたフランス語吹き替えの『白い恐怖』、学校の映画部に入って企画した鑑賞 会で選んだ映画『ひなぎく』、『SHOAH ショア』を観たときの体験、『大人は判ってくれない』をあらためて観た後、大きな決断をしたこと……ポールという1人の少年の成長物語と、映画が誕生した 19世紀末から現在までの映画の歴史が編み上げていくエッセイは、懐かしさと愛がつまった宝箱のよう。ポールの映画への愛はもちろん、 ポールに関わる人たちへの愛が。ポールの祖母(フランソワーズ・ルブラン)、大学教授(ミシャ・レスコー )、ドキュメンタリーパートで本人として出演している文芸評論家のショシャナ・フェルマンと友人のケント・ジョーンズ……スクリーンいっぱいに愛と優しさ が溢れているのだ。そして、本作のナレーションを手がけるマチュー・アマルリックが登場するワンシーン。彼が微笑んだ一瞬を何と表現した らよいのだろう。『そして僕は恋をする』と『あの頃エッフェル塔の下で』でポールを演じたマチューをこのタイミングで、このように登場さ せてしまうデプレシャン監督の技量とマチュー自身の天性の魅力が呼応したときのまばゆいほどの輝き……映画の魔法をまたひとつ発見し た。(Mika Tanaka)
 
監督:アルノー・デプレシャン
出演:ルイ・バーマン、クレマン・エルビュー=レジェ、フランソワーズ・ルブラン、ミロ・マシャド・グラネール、サム・シェムール
2024年/フランス/88分
 
Spectateurs! d’Arnaud Desplechin avec Louis Birman, Françoise Lebrun,Milo Machado-Graner, Sam Chemoul, Salif Ciss, Mathieu Amalric; 2024, France, 88 min
 
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