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『彼のイメージ』(À Son Image)への思い(監督・主演インタビュー)
投稿日 2024年12月7日
 ティエリー・ド・ペレッティ監督(左)と、クララ=マリア・ラレドさん(右) 2024年11月3日撮影
ティエリー・ド・ペレッティ監督(左)と、クララ=マリア・ラレドさん(右) 2024年11月3日撮影
Crédits : ©︎Mika Tanaka

第37回東京国際映画祭のコンペティション作品のひとつ『彼のイメージ』(À Son Image)。監督・脚本を務めたティエリー・ド・ペレッティ(Thierry de Peretti)さんと、主演のクララ=マリア・ラレド(Clara Maria Laredo)さんが本映画祭のために来日、作品への思いについて語ってくれた。
 
 ジェローム・フェラーリ原作の小説『彼のイメージ』はコルシカ島(コルシカ語では”Corsica”、フランス語では”Corse”) が舞台。ペレッティ監督も、そして主演のクララ=マリアさんもコルシカ島出身だ。「ナポレオン1世が生まれた場所」として知る人もいるだろうが、この島について多くを知る日本人は、決して多いとは言えないのが現状だ。
 映画の上映後の登壇で、日本を訪れたのが2度めとなるペレッティ監督は、観客にこう問いかけた。「日本の観客の皆さんは敏感に、映画からさまざまなものを受け取ってくださると感じています。この映画は島国に住む皆さんにとって理解しやすい内容だったでしょうか?あるいは、遠い国の人口の少ない小さな島で起きた出来事は、理解が難しかったでしょうか?」。
 地中海に浮かぶ島のひとつコルシカ島は、さまざまな国の支配下に置かれ続けてきた。たびたび独立運動が起こっては失敗に終わり、島を出た人たちも残った人たちも、コルシカへの思いが強いと言われている。ペレッティ監督とクララ=マリアさんもまた例外ではない。だからこそ、2人の強いメッセージが映画を通して私たちの心を揺さぶる。
「コルシカには、1つのテーブルで議論されることなく棚上げにされてしまった問題がたくさんあります」と語るペレッティ監督。「でも、苦痛を伴うものだからこそ語る必要があり、こうして映画をつくることができるんです」。置いていかれてしまった人たちの無念を引き受けて完成したのがこの映画なのだろう。
「文化は政治と密接に関わっています。社会は複雑だけれど、私は演じる人物たちの視点、彼らのプリズムを通して理解し続けたい」。政治を学ぶクララ=マリアさんはこう続ける。「これからもこの映画のように、自分自身が語りたいと思う内容のものを、エシカルなものを選んでいこうと思います」。彼女の発する言葉は、輪郭がはっきりとしている。
 ペレッティ監督のアイドルは、北野武監督。笑いがあってメランコリックで緊迫感があって……異なる要素が絶妙なバランスで混在する、そのセンスが彼の理想なのだとか。『彼のイメージ』の原作では、主人公のアントニアの描写はとても悲しげだそうだ。一方映画では、コミカルなセンスも持ち合わせるクララ=マリアさんがアントニアを演じることによって、軽やかさが生まれた。映画では、字幕では拾いきれないようなところに笑いを誘う台詞等がちりばめられているという。本来なら悲しいはずのアントニアの交通事故のシーンも、「バーレスクっぽくなったのでは」とペレッティ監督は振り返る。映画だけでなく舞台でも活躍するペレッティ監督は、2006年の来日時、能楽堂でコメディー・フランセーズの俳優としてサルトルの芝居を演じた。幅広い活動をする彼の”絶妙な”さじ加減は、北野武監督の個性とはまた違った魅力に溢れている。
 
通訳: 山田紀子
取材・文: 田中明花
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