『ネネ ‐エトワールに憧れて‐』「ここは私の居場所じゃない。邪魔してごめんなさい」書き置きを残し、パリオペラ座のバレエ学校の寮を出たネネ(オウミ ブルーニ・ギャレル)。才能に溢れ、努力を惜しまなった彼女は、何に負けたのだろう……深夜、迎えにきてくれた父親に「黒人はうんざり、白人がよかった」と吐き捨てるように言うネネに。すると父親はこう答える。「黒人だからじゃないんだ、扱いがひどいから嫌なんだ」と。育った街で慣れ親しんだヒップホップを極めるという選択もあったろう。家族と離れて寮で暮らし、食べたいものを我慢して練習三昧の毎日を過ごすだけが人生ではなかったはずだ。「伝統とは異なる」という理由で身体的な特徴が不利になる、経済的なゆとりがあるわけでもない。その選択をするのは、ネネ自身だけではなく家族にも、相当の覚悟が必要だ。そして、ネネはその道を選び、家族は応援することを選んだ。「バレエのエトワールを目指す」という道を。バレエ学校の校長は、ネネの憧れだったかつてのエトワール、マリアンヌ(マイウェン)。しかし、マリアンヌはなぜかネネを認めようとしない。ネネを温かく見守る教師と冷遇する教師、ネネの才能に嫉妬する生徒と、共に励もうとする生徒。そんな狭間でネネは少しずつ自分の心のバランスを崩していく……パリ・オペラ座バレエ学校は、300 年以上の歴史がある世界最古のバレエ学校。入学してからも厳しい審査は続き、パリ・オペラ座バレエ団に入団できるの は毎年数人という狭き門だ。パリオペラ座の現役ダンサー、ジュリアン・メザンディがクラシックダンスアドバイザーとして参加、エトワールのレオノール・ボラックが本人役で躍るシーンもみどころ。優雅なバレエにうっとりするだけではもったいない。コンテンポラリーダンスの新星メディ・ケルクーシュの振り付けによるストリートダンスで思い切り心を解放しよう。(Mika Tanaka)監督:ラムジ・ベン・スリマン出演:オウミ・ブルーニ・ギャレル、マイウェン、アイサ・マイガ、スティーヴ・ティアンチュー、セドリック・カーン、レオノール・ポラック2023年/フランス/97分Neneh Superstar de Ramzi Ben Sliman avec Oumy Bruni Garrel, Maïwenn , Aïssa Maïga, Cédric Kahn; France, 2023, 97 min
『ネネ ‐エトワールに憧れて‐』 Neneh Superstar