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『パリのちいさなオーケストラ』  女性であること、移民であること……夢を叶えるのに、こんな理不尽な壁
Divertimento
Divertimento
Crédits : © Easy Tiger / Estello Films / France 2 Cinéma

『パリのちいさなオーケストラ』
 女性であること、移民であること……夢を叶えるのに、こんな理不尽な壁が立ちはだかってよいのか、と思う。しかし現実はそうなのだ。それが自由と平等の国フランスであったとしても。この映画の主人公の、ザイア(ウーヤラ・アマムラ)とフェットゥマ((リナ・エル・アラビ)の姉妹もまた、そんな壁の前で悩み苦しむ。
 パリ郊外、パンタン。双子の姉妹はこの街でアルジェリア系移民として育つ。地元のクラシック音楽院でザイアはヴィオラを、フェットゥマはチェロを10年間学ぶ。最終学年でパリの名門音楽院に編入するも、経済的に恵まれた一部の生徒からの心ない言葉に失望する。
 ザイアは指揮者になりたいと願う。しかし女性の指揮者は世界でわずか6%。そんな困難の中、世界的指揮者セルジュ・チェリビダッケ(ニエル・アレストリュプ)との出会いによって、ザイアの道は少しずつ拓き始める。
 本編で流れるさまざまなクラシック音楽に彩られるかのような、さまざまな人生。ストライキで電車が止まると、音楽院の授業に間に合うよう暗い時刻に車を走らせ、ザイアとフェットゥマをパリまで送り届ける父。(子供たちがクラシックを目指すきっかけを作ったのが彼だった)。ザイアの友人ディランは、父からピアノとクラリネットを学ぶ。しかしその父は、何らかの理由で刑務所にいる。ザイアの師となるチェリビダッケは、音楽以外のすべてを捨て、孤独を抱えて生きてきた。 
 ひときわ印象に残るシーンがある。ザイアとフェットゥマが地元のワークショップに参加しているときのことだ。ダウン症の女性が好奇心いっぱいにチェロを触っている。しかし、彼女にとって楽譜を読むことはとても難しく、チェロを学びたくとも学べない。フェットゥマは方法を考える。楽譜がなくても彼女がチェロを演奏できる方法を。そして、弦に色付きのステッカーを貼ることを思いつく。「一番高い音が出る弦は何色がいい?」。彼女と会話をしながらフェットゥマはステッカーを貼っていく……彼女の名はイザベル。実話がもととなっているこの映画で、イザベル自身が本人役で出演している。フェットゥマの弟子となったイザベルは、スクリーンの中だけでなく、実生活でも大きく羽ばたいていく。
 監督は、マリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール。彼女がカメラでとらえる市井の人々の数々の奇跡に、希望の光を見る。(Mika Tanaka)
監督・脚本:マリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール
出演:ウーヤラ・アマムラ、リナ・エル・アラビ、ニエル・アレストリュプ
2022年/フランス/114分
 
Divertimento de Marie-Castille Mention-Schaar avec Oulaya Amamra, Lina El Arabi, Niels Arestrup; 2022, France, 114 min
 
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