『助産師たちの夜が明ける』命の誕生。この尊い瞬間になくてはならない存在、それが助産師だ。一方、仕事への誇りを持てば持つほど、さまざまな矛盾に苦しまなくてはならいという現実がある。レア・フェネール監督は、40人程の助産師たちに会い、取材を重ね、ときには職場で共に過ごした。出産を控える家族たちの協力を得て、その出産に立ち会い撮影を行うこともあった。自然分娩、帝王切開……1つひとつのシーンに漂うスピード感は、命の尊さに感動する間もない彼らの激務という現状を物語る。ジョークを言い合っていたかと思うと、その次の瞬間には緊急対応、息つく間もない助産師たち。自分の子供と過ごす時間を削り、自分の不調を後回しにし、死産のカップルを5時間放置したことをひたすら謝罪する。アフリカ系フランス人の新人助産師がいる。男性の助産師がいる。さまざまな境遇の妊婦たちも登場する。ニジェールからの移民、母親の過干渉から逃れられない若き妊婦、死産の経験から立ち直ろうとする妊婦の姿も。レア・フェネール監督は、幼い息子の入院中に病院側に対してさまざまな疑問や不安を抱いた。そしてその理由を、映画を撮ることで知ろうとした。彼女が出した答えが、映画のラストシーンで明らかになる。病院で働く助産師たちも素晴らしいが、街中の彼らの姿もまた、美しい。(Mika Tanaka)監督:レア・フェネール出演:エロイーズ・ジャンジョー、ミリエム・アケディウ、カディジャ・クヤテ2023年/フランス/100分Sages-femmes de Léa Fehner avec Héloïse Janjaud, Myriem Akheddiou, Khadija Kouyaté; 2023, France, 100 min
『助産師たちの夜が明ける』 Sages-femmes