Crédits : © 2021 – Single Man Productions – Ad Vitam – JM Films 『母へ捧げる僕たちのアリア』愛されているんだな、と 思う。長男のアベル(ダリ・ ベンサーラ)、次男のモー(ソフィアん・カーメ)、三男のエディ(モンセフ・ファルファー)。不完全で情けないところがいっぱ いある兄たちだけれど、末っ子のヌール(マエル・ルーアン=ベランドゥ)への愛情が端々に感じられる。季節は夏。バカンスを過ごす人と地元の人とが行き交う、南仏の海沿いの街が舞台だ。この街の公営住宅で昏睡状態の母を看病しなが ら、4人の兄弟が肩を寄せ合 う。ものすごく仲がいいというわけではない。ひどい喧嘩もする。それでも、お腹が空く頃には4人揃ってパスタを食べる。父の姿はない。ヌールは母のために、大音量でオペラを聴かせるのが日課。「消せ」「音量を下げろ」「よく飽きないな」と、兄たちの態度は冷や やかだ。「お母さんが好きなオペラをいつか目の前で歌ってあげたい」、ヌールはそう考える。お父さんはオペラを歌ってお母さんの 心をつかんだのだから、自分にだって歌えるはず。そんな確信があるのだろう。オペラ歌手サラ(ジュディット・シュムラ)との出会い、母や兄との関係、甘酸っぱい友情……ひと夏の少年の心の機微と南仏の陽の 光を、ヨアン・マンカ監督は柔らかい質感の16mmフィルムにおさめた。三 脚でしっかり固定したカメラで撮影された映像には、移民が暮らす地域の豊かな側面が映し出される。劇中で流れる美しいオペラの数 々もまた美しい。(Mika Tanaka)監督:ヨアン・マンカ出演:マエル・ルーアン=ブランドゥ、ジュディット・シュムラ、ダリ・ベンサーラ、ソフィアン・カーメ、モンセフ・ファルファー2021年/106分La traviata mes frères et moi de Yohan Manca avec Maël Rouin-Berrandou, Judith Chemla, Dali Benssalah, Moncef Farfar, Sofian Khammes; 2021, France, 106 min

『母へ捧げる僕たちのアリア』 La traviata mes frères et moi
